これまでの街歩き

アリススプリングズ/ オーストラリア

2012年5月8日(火) 初回放送

語り:小倉久寛

撮影時期:2012年1月

世界地図

地図

場所

 アリススプリングズは、オーストラリア大陸のほぼ中心に位置する人口2万8000の街です。中央オーストラリアの雄大な自然を楽しむための観光の街として特に有名で、世界最大級の1枚岩、ウルル(エアーズロック)への観光拠点でもあります。
 海までは直線距離にして約800km。街の周囲は見渡す限り荒野が広がっています。街の開拓の歴史は19世紀、この地で中央オーストラリアを探索していた調査隊が泉を発見してから始まりました。泉は「アリスの泉」と名付けられ、それが街の名前「アリススプリングズ」の由来に。以降、泉の周辺に街が開かれていきます。大陸の電信網の中継基地が建設され鉄道が開通、その後、ゴールドラッシュや観光業の発展に伴う旅人の流入…。街は、多くの人々が集まる南北交通の要衝として発展を遂げました。また、ほかの大都市から隔絶された場所にあることから、オーストラリアの先住民アボリジニの文化がひときわ色濃く残る土地でもあります。

Information

アリススプリングズの歴史

 アリススプリングズは広大な中央オーストラリアの荒野の中心に位置しています。なぜこの場所に街が築かれたのでしょうか。お話は19世紀、オーストラリア開拓時代までさかのぼります。
 1871年、広大な国土を電信線でつなぐため、内陸探査を行っていた調査隊が、この地で泉を発見しました。泉は、「アリスの泉(アリス・スプリングズ)」と名付けられました。地理的にも大陸のほぼ中心であったことから、泉のほとりに電信中継基地が建設されることになりました。電信基地が完成すると、情報の伝達スピードは飛躍的に向上。それまでロンドンまで2か月かかっていた電報が、たった2時間で届けられるようになりました。こうしてオーストラリアの情報ネットワークの中心的存在となった電信中継基地の周囲に、アリススプリングズの街は形づくられて行きます。
 街の建設に一役買ったのが、ラクダでした。インドや中東の国々から輸入されたラクダは、暑さや乾きに強く、自動車や鉄道の普及以前、物資運搬や旅人の足として大活躍をしました。ちなみに、電信中継基地で働いていたオペレーターたちは私用で電信施設を使用することが許されていませんでした。そのため、2か月に一度だけラクダで運ばれてくる手紙で、遠く離れて暮らす家族と連絡を取っていたそうです。
 20世紀に入ると、不毛の地だった中央オーストラリアへ観光客がやって来るようになります。荒野の中にあるアリススプリングズは、今度は観光の街へと生まれ変わることになります。ウルル(エアーズロック)をはじめとする内陸の雄大な大自然は、観光の目玉となります。こうしてアリススプリングズは、観光拠点として多くの人々を集める街となりました。

アボリジニの文化

 オーストラリア大陸に初めてヨーロッパ人がやってきたのは、16世紀になってからのことです。この島の先住民は「アボリジニ」と呼ばれる人々でおよそ5万年前、氷河期の中頃からこの大陸に住んでいたと言われています。およそ2万年前、解氷期が始まると海面の上昇によって大陸間の移動が困難になったため、アボリジニは他の大陸から孤立しました。そのため、およそ1万年前に始まったとされる農耕の文化も伝わりませんでした。結果として、アボリジニは狩猟や採集によって生活を営んできました。
 一口にアボリジニと言っても、言語だけで推定250にも分かれており実に多彩な文化を持っています。「アリススプリングズ・デザートパーク」では、この地域のアボリジニの文化を学ぶことができます。例えば、ご存じブーメラン。アリススプリングズ周辺のアボリジニが使うブーメランにはさまざまな種類があります。儀式用のL字型のもの、投げると戻って来る鳥用の小さなもの、中でも特徴的なのは、カンガルーの狩りに使う大型のものです。長さは1mあまりで、投げても戻って来ません。両手で持って、地をはうような軌道で投げます。破壊力も抜群。熟練の狩人だと30m先の獲物を捕らえることができます。
 また、荒野での食料探しもアボリジニの得意とするところ。アボリジニの食料は「ブッシュタッカー」つまり「茂みの食べ物」と呼ばれています。主に野生動物や植物ですが、その種類は実に多様。ビタミンCが豊富なブッシュトマト、ハーブの1種レモングラス、蛾(が)の幼虫であるウィチェッティグラブなどが有名です。近年、世界各地のレストランで修業を積んだオーストラリアのシェフたちの努力により、温故知新の新しいグルメとしてブッシュタッカーの価値が見直され、5つ星クラスのホテルや高級レストランで、大陸独自の味としてメニューに取り入れられています。

食べ歩きグルメ

街歩きしながら手軽に楽しめるご当地の味を、厳選してご紹介!

 アリススプリングズの食べ歩き・グルメベスト3を紹介してくれたのは、地元の大学生クララさん。食べたらすぐに力がわいて来る、荒野の街ならではのエネルギー・フードを選んでくれました。

ハンバーガー・ウィズ・ザ・ロット

「ロット(lot)」とは「全部」という意味。卵、ベーコン、パテ、野菜など、お店にある具材を全部はさんでしまうハンバーガーです。「ビート」という真っ赤な根菜が入っているのがお約束。とにかく巨大で、ボリューム満点です。

ダンパー

中央オーストラリアの開拓者たちが、小麦粉、水、バターを目分量で混ぜ、キャンプ地の残り火の上で焼いて作ったと言われるパンです。現在ではホウレンソウが練り込まれていたり、ジャムがはさんであったりとバリエーションも豊富。素朴な味に根強い人気があります。

チコロール

オーストラリアでは、ちゅう房付きのガソリンスタンドも珍しくなく、そこではスナックやドリンクが販売されています。チコロールは、そんなガソリンスタンドの名物。小麦粉の皮で巻いた揚げ物で、中身は牛肉、キャベツ、ニンジンなど。具がぎっしりつまっていて、これ一本で満腹になります。

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