これまでの街歩き

アリススプリングズ/ オーストラリア

2012年5月8日(火) 初回放送

語り:小倉久寛

撮影時期:2012年1月

街の「ラクダ旅」

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 街を歩いていると、ラクダを引いて歩く男性を発見しました。ラクダは荷物を積んだ小型のリアカーを引いています。話しかけると、1000km以上も離れた大陸北部の街キャサリンから、ラクダとともに2か月半も歩いてこの街へやって来たといいます!驚いていると、さらに1000km以上歩いて大陸南部のビクトリア州まで旅する予定だと教えてくれました。つまりこの方、徒歩で大陸縦断の旅を敢行中なんです!
 相棒のラクダくん、名前を「ヌードルズ」というんですって。旅の初めに購入したそうです。オーストラリアには開拓時代から多くのラクダが、インドや中東の国々から輸入され物資運搬や旅人の足として活躍してきました。ラクダ牧場も各地にあり、なんと今では野生のラクダまで生息しているほど。男性によると、ラクダは車では入って行けないような茂みや荒れ地を歩くことができるので、スピードは遅くとも、それなりに便利なんだそうです。また、ラクダを引いて歩いていると、多くの人から声をかけられるので、旅が楽しくなるとも教えてくれました。
 もちろん荒野の旅は過酷です。常に150リットルの水を携行し、食事はほとんどが缶詰、もしくは道すがら食べられる植物を採集し、おなかを満たすんですって! 猛暑や豪雨に襲われ猛毒のヘビにかまれそうになったこともあったりとさんざんだったそう。それでも旅の話をする男性は楽しそうです。
 「車と違ってCO2(二酸化炭素)の排出も抑えられるだろ?」といたずらっぽく笑っていました。

街の「先住民アボリジニ」

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 街を南北に貫くトッド川。地図上では水色に塗られていますが、実はこの川、普段は干上がっていて滅多に水が流れることはありません。川床の砂地に輪になって座り込む、先住民アボリジニの皆さんに出会いました。声をかけたところ、お食事中とのこと。「この川に住んでいる」と言います。アリススプリングズは隣の大きな街まで400~500kmという土地柄から、シドニーやメルボルンなどの大都市に比べると昔ながらのアボリジニの風習や文化が色濃く残されています。この街で暮らすアボリジニの人々の多くは、狭い建物の中に暮らすことを嫌い、大自然の下での生活を好みます。このご家族も、祖先の土地であるトッド川で寝起きし、食事し、おしゃべりし、絵を描いたりしながら暮らしているのだそうです。
 何を食べているのか聞いてみると、「カンガルーのしっぽ」とのこと。狩りをしたのかと思ったら、なんでも近所のスーパーで売っているんだそう。それをたき火で調理して食べていました。ほかにも、小麦粉を水で練って焼いたパンや、野菜のホイル焼きなど、メニューはなかなか豊富です。「私たちは何万年もこうして自然の中で暮らして来たの。自然は家族。木も草も、砂でさえも愛しているわ」。アボリジニのおばさんは、優しい表情でそう教えてくれました。

街の「バイク乗り夫妻」

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 住宅街を歩いていると、庭に何台もの大型バイクを並べてお手入れしているおじさんに出会いました。聞けば、おじさんのご家族はみんなバイク乗りで、全部で6台も所有しているのだとか。バイクはみんなピッカピカ。家に隣接されたガレージは、まるで車の整備工場。さまざまな器具や工具が詰まっていて、秘密基地のようです。おじさんはここを「男の洞窟」と呼んでいて、なんでも家のことや奥さんの命令に嫌気がさすと、ここに逃げ込むんだそうです。おじさんいわく、「オーストラリアの男はみんな『男の洞窟』が必要なのさ」。
 バイク談義に花を咲かせていると、コーヒーカップ片手に奥さんが登場。ご夫婦のなれそめをお話してくれました。2人は30年前、地元のバーで知り合ったんだとか。なんと奥さんがおじさんをナンパしたんだそうです。バイクなど乗ったこともなかった奥さんは、2人でバイクに乗りたいと免許をとり、それ以来、ずっと一緒なんですって。新婚旅行もバイク、やがて生まれた3人のお子さんも立派なバイク乗りに育て上げたと自慢げに教えてくれました。
 奥さん、お話の最後にはスカートをたくし上げて、バイクにまたがって見せてくれました。最近では、奥さんが運転し、後ろに旦那さんを乗せるそうです。実はとても仲の良いご夫婦なんですね。すてきなお話、ごちそうさまでした。

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