これまでの街歩き

ブラショフ/ ルーマニア

2009年10月29日(木) 初回放送

語り:松田洋治

撮影時期:2009年7月

街の「看板」

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スファルトゥルイ広場(旧市庁舎の広場)を取り囲む建物には、鉄の看板が突き出ています。ニワトリをかたどった看板のお店をのぞいてみると時計屋さんでした。“時を告げる鳥”と言われるニワトリ。だからなんですね。
中世のブラショフは、職人の街でした。職人たちは「ギルド」と呼ばれる同業者組合を組織し、軒先に各ギルドのシンボルマークを掲げ、どこに所属しているかを示していたんだそうです。鉄の看板は、その名残だそうですが、中には、何屋さんだかわからない看板も見受けられます。
丸っこい看板を掲げているのは、ホテルでした。看板は、以前隣にあった本屋のものではないかというのですが、はっきりとはわからないとのことでした。建物自体は600年前のもの。住宅や銀行など、さまざまに利用されたために、何の看板か分からなくなってしまったらしいのです。600年の歴史、奥が深いですね。

街の「糸通り」

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細い細い路地を発見。道の名は“糸通り”。幅1.32mで、ヨーロッパで最も狭い通りのひとつに数えられています。壁面の修復工事中だったためにスコップやバケツが置かれ、道はさらに狭くなり、人とすれ違うのがやっと。職人さんも仕事がしにくそうでした。
工事道具に混じって、職人さんのカバンも置かれていて、中身を見せてくださいました。お昼ごはん用のトマトとパン、奥さま手作りの卵入りスープ、デザートには桃。おいしそうなものが次から次へと出てきます。続いて取り出したのはシンデレラの絵本。「孫へのプレゼントなんだ」と嬉しそうに話すその笑顔は、職人の顔から優しいおじいさんの表情になっていました。

街の「牛の絵の家」

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石畳の坂道が続く住宅街を歩いていくと、外壁に絵が描いてあるお宅を発見しました。広い草原の真ん中に大きな牛が力強く描かれています。住んでいるご婦人に話を伺うと、アマチュアの画家だった父親の形見なんだそうで、牛の他にも、冬のブラショフでは欠かせないスポーツのスキーなど、この地の伝統的な暮らしが描かれていました。
ご婦人は、今は首都ブカレストにお住まいですが、休暇はこの家で過ごすそうです。「子ども時代の楽園なの」とおっしゃる表情に、父親と過ごした穏やかな日々がかいま見えたように思いました。
偶然遊びに来ていたのは、向かいに住むご親せき。向かいだけじゃなく、隣も、階段でつながっている上のほうの家の方も、みなさんご親せきの家だとか。素敵な絵に囲まれて、気の合う親せきがそばにいて…。たしかに、楽園かもしれませんね。

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