これまでの街歩き

上海・南京路界わい/ 中国

2012年6月12日(火) 初回放送

語り:田畑智子

撮影時期:2012年4月

街の「路地に洗濯物を干す習慣」

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 繁華街の南京路を一歩裏に入ると、地元の人たちの住宅街があります。その路地には洗濯物が所狭しと干してあり、なんだか見た目がにぎやか。どことなく日本の下町の昔懐かしい長屋みたいで両側には小鳥やリス、きれいな草花が育てられています。その路地を歩いていると、ちょうど洗濯物を干しているおばさんに出会いました。なにやら、長いさおのような道具を使って器用に高い所に干しています。先が二股に分かれているそのさお、昔から伝わる「ウツト」という道具なんだそうです。
 この辺りの住宅は、上海の昔ながらの「石庫門」と呼ばれるもので、台所やトイレ、水回りはすべて外。洗濯物を干すスペースは家の中にはありません。そのため昔から洗濯物は外(自宅前の路地)に干すのが習慣なんだそうです。
 出会ったおばさんは結婚以来ずっとここに住んでいて、住宅の建物自体は建ってから80年以上になるとか。いつも高い所に洗濯物をかけるのは大変でしょう、と聞くと「これが健康の秘けつ」と陽気に答えてくれました。

街の「老舗刃物店」

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 南京路を歩いているとショーウインドーに何やらキラリと光るものが…。近づいてみると、とっても大きな包丁でした。店内をのぞいてみることに。中華包丁はもちろん、さしみ包丁のような物や見たこともない曲がった包丁など、その種類は実にさまざま。
 店員さんによると、ここは約350年の歴史を誇る中国でも有名な老舗刃物店で、包丁は家庭用から工業用まで、包丁以外にもナイフやハサミなどすべての刃物を扱っているんだそうです。
 店員さんと話していると、その頭の上をシャーっと何かが飛んでいきました。よく見ると上にワイヤーのような物で線が張ってあって、そこをクリップを付けた板が行き来しているようです。まもなく、またシャーっと戻ってきました。何なのでしょう?店員さんはおもむろにそこからお金と伝票を取り外し、お客さんに渡しました。そう、レジ係とのやり取りを行っていたんです。お客さんを待たせない昔ながらのやり方だそうで、こういう伝統も守っているんだ、と店員は自慢げに話してくれました。
 驚いたのは、レジ係が接客係に送り返すときの正確さ。目がけた所でピタッと止まるんです。さすが老舗の刃物店。切れ味鋭い伝統の技です。

街の「ストリートダンサー」

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 夕方の南京路は観光客はもちろん、会社帰りの勤め人、若いカップルなどであふれ、1日で最もごった返すときです。そこに響き渡る音楽。通りに面したビルの2階のバルコニーでサックスの生演奏がされていました。その下には、たくさんの人だかり。それをかき分けて中を見てみると、大勢の男女がダンスに興じていました。皆さん、若干お年を召しているようですが、動きは軽やか。中には、ブレイクダンス風の踊りをされている男性も。尋ねると、お年は77歳で中学校の元教師、もう60年も踊っているとか。根っからの上海人で、特にこの南京路が大好きなんだそうです。ここで踊っている人たちは特に何か決めているわけでもないのに、毎日こうして踊りに集まっちゃうんだとか。昔はここ南京路にダンスホールが何軒もあったといいます。ダンスを楽しむ人々の光景は、早くから西洋文化が広まった上海ならではのものなのかもしれません。

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