ゲイリー・オールドマンの演技に圧倒される…

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

2月7日(水)[BS]午後1:00〜3:06

今回ご紹介するのは、名優ゲイリー・オールドマンがアカデミー賞を受賞した迫真のドラマです。

第2次大戦下の1940年、イギリス首相に就任したウィンストン・チャーチル。当時ナチス・ドイツはフランスを侵略し、イギリスにも迫る勢いでした。国民の人気は高かったものの、政敵も多かったチャーチル。そんななかイギリスなどの連合軍がフランス・ダンケルクの海岸で孤立。チャーチルは兵士を救うため大型船や民間のボートも召集し“ダイナモ作戦”を実行しますが…。

就任からダンケルクの戦いまで、激動の日々を描くこの作品、チャーチルを熱演するゲイリー・オールドマンに圧倒されます。また、映画界から遠ざかり、現代美術家として活動していたカズ・ヒロ(辻 一弘)がオールドマンからじきじきのオファーを受けて特殊メークを担当。アカデミーメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞したことも話題となりました。

ゲイリー・オールドマンは1958年ロンドン生まれ。パンクロックバンド、セックス・ピストルズのベーシスト、シド・ヴィシャスを演じた「シド・アンド・ナンシー」(1986)で注目され、オリバー・ストーン、フランシス・フォード・コッポラ、トニー・スコットといった名監督の大作・話題作に次々出演。「ハリー・ポッター」シリーズではシリウス・ブラックを演じ、より広く知られるようになりました。
ジョン・ル・カレの傑作小説を映画化した「裏切りのサーカス」(2011)で冷静沈着な老スパイ、ジョージ・スマイリーを演じてアカデミー賞に初ノミネート、2度目のノミネートとなった本作で主演男優賞を受賞しました。

ドラキュラ伯爵や魔法使いシリウス・ブラックといった架空のキャラクターから、シド・ヴィシャス、ベートーベン、ケネディ暗殺犯とされたオズワルド、本作のチャーチルといった実在の人物まで、どんなキャラクターでも見事に演じ、見るものを感情移入させるオールドマン。その演技は多くの若手俳優からも深く尊敬されています。
本作でもチャーチルに似せるのではなく、チャーチルの人間性、苦悩や決断を自分のものとして表現した演技は、オールドマンにしかできないと感じさせます。

チャーチルの妻を演じるクリスティン・スコット・トーマス、秘書エリザベスを演じるリリー・ジェームズ、国王ジョージ6世を演じるベン・メンデルソーンをはじめ共演者も実力派ばかり。ジョー・ライト監督の重厚な演出も見応えたっぷりです。どうぞお楽しみください!

プレミアムシネマ「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」

2月7日(水)[BS]午後1:00〜3:06


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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