鬼才ティム・バートン、父と息子の絆を描いた感動作

ビッグ・フィッシュ【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

5月1日(水)[BS]午後1:00〜3:06

今回ご紹介するのは鬼才ティム・バートン監督の感動のファンタジーです。

パリで身重の妻と暮らすウィルのもとに、父エドワードの容体が悪化したと母のサンドラから連絡があります。エドワードは、いつも自分の人生をまるでおとぎ話のように語って周囲を楽しませ、ウィルもそんな父が大好きでしたが、大人になるにつれ、父の話をでたらめだと感じ、疎遠になっていました。久しぶりに故郷へ戻り、父と再会したウィルは…。

シュールで鮮やかな映像と極上のユーモアで父と息子、家族との絆を語るこの作品、個性的なキャラクターを名優たちが演じています。父エドワードを演じるのは2人のイギリス人。若き日の父を演じるユアン・マクレガーは、青春映画「トレインスポッティング」(1996)や「スター・ウォーズ」シリーズでオビ=ワン・ケノービを演じて世界的に知られています。本作では家族を愛する誠実なエドワードを端正に演じています。老いたエドワードを演じるのはアルバート・フィニー。舞台で活躍後、主役を務めたアカデミー作品賞受賞作「トム・ジョーンズの華麗な冒険」(1963)やエルキュール・ポワロを演じた「オリエント急行殺人事件」(1974)をはじめ、数々の名作に出演。本作では奇想天外な話を説得力たっぷりに語る姿が印象的です。

ウィルを演じるビリー・クラダップは、父への複雑な感情を、表情を微妙に変える繊細な演技で表現しています。母サンドラを演じるジェシカ・ラング、サンドラの若き日を演じるアリソン・ローマン、アイパッチをつけた魔女を演じるヘレナ・ボナム・カーター、バートン作品常連のダニー・デビート…、共演者も存在感たっぷりの名演技をみせてくれます。

ティム・バートン監督は「バットマン」(1989)、「シザーハンズ」(1990)、「チャーリーとチョコレート工場」(2005)などの名作を次々発表してきました。1958年生まれのバートン監督は、幼いころから怪獣映画やホラー映画が大好きで、絵を描くことだけが楽しみの少年時代をすごしたということです。ウォルト・ディズニーとその兄ロイが設立に携わったカリフォルニア芸術大学に進学後、アニメーターとして映画の仕事をはじめ、30歳で監督した「ビートルジュース」(1988)が大ヒット、若き天才として注目されました。バートン監督は本作の準備中に父を亡くし、父への思いもこめて、この映画を製作したということです。

深い感動に包まれるラスト。何度見ても、優しい気持ちになれる名作です。ぜひご覧ください。

プレミアムシネマ「ビッグ・フィッシュ」

5月1日(水)[BS]午後1:00〜3:06


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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