現代のサンフランシスコで、ルイという青年が自らの半生を語り始めます。それは、吸血鬼レスタトによって人間からヴァンパイアに変貌させられた、200年にわたる苦悩と孤独の物語でした…。
今回ご紹介するのは豪華スターが共演するホラー映画の名作です。
何といっても見どころはヴァンパイアを演じる大スター。ルイを演じるのはブラッド・ピットです。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019)でアカデミー助演男優賞を受賞、映画会社を設立し、製作を務めた「それでも夜は明ける」(2013)「ムーンライト」(2016)はアカデミー作品賞を受賞しています。本作では、ヴァンパイアとなっても人間としての良心を持ち続けるルイの孤独な心情を真摯に表現しています。
レスタトを演じるのはトム・クルーズ。「トップガン」(1986)からおよそ40年、還暦を過ぎた今も体を張った超絶アクションで大活躍中です。欲望のままに行動するレスタトを、ときにユーモアを交えて演じ、強烈なカリスマ性を表現しています。
1歳しか違わない同世代のピットとクルーズ、良きライバルとしての火花を散らす熱演が見るものを魅了します。
原作は作家アン・ライスが1976年に発表したベストセラー小説。出版前から映画化が検討され、原作に深く魅せられたデビッド・ゲフィンが製作を熱望して実現しました。ライスは当初、クルーズがレスタトを演じることに不満を表明しましたが、完成作を見て絶賛、クルーズに謝罪の手紙を書いたということです。さらにスペイン出身のアントニオ・バンデラス、撮影当時11歳だったキルスティン・ダンストも吸血鬼の悲哀を見事に演じています。
監督のニール・ジョーダンは、ストーリーテリングと映像美が高く評価される、アイルランド出身の名匠です。本作も、テンポの良い展開、フランス出身の名撮影監督フィリップ・ルースロの深い陰影のライティング、イタリア出身のプロダクション・デザイナー、ダンテ・フェレッティの幻想的な美術セット、ゴージャスな映像美も見どころです。
さらに音楽。ご注目いただきたいのは、ガンズ・アンド・ローゼズによるローリング・ストーンズの「悪魔を憐れむ歌」のカバー・バージョン。ロック史上に残る名曲は、歌詞も曲も物語にピッタリ、抜群の選曲にうれしくなってしまいます。
インタビュアーを演じる予定だったものの、急逝したリバー・フェニックスに捧げられた、90年代を代表するホラー映画。どうぞご堪能ください。
プレミアムシネマ「インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア」
6月3日(月)[BS]午後1:00〜3:04
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【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)
1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。