人造人間との戦いを描く、SF映画の金字塔

ブレードランナー ファイナル・カット【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

5月8日(水)[BS]午後1:00〜2:59

今回ご紹介するのはSF映画の金字塔。傑作中の傑作です。

2019年11月のロサンゼルス。高い知性と身体能力を持つ人造人間=レプリカントが反乱を起こし、地球に戻ってきます。特捜班“ブレードランナー”のリック・デッカードは捜査を開始し、レプリカントを追い詰めますが…。

舞台設定は今から5年も過去になりましたが、降りしきる雨の都市、東洋と西洋の文化がハイブリッドし、細部まで凝りに凝ったデザインや強烈な光と影の映像美。リドリー・スコット監督の独創的な未来のビジョンは、今なお映画、アニメ、コミック、ゲーム、さまざまなクリエーターに影響を与えつづけています。

42年前の劇場公開時はヒットしなかったものの、ビデオなどソフト化されると熱狂的なファンが続出、年を経るごとに評価が高まり映画史上の名作となった本作。実はさまざまなバージョンがあることで知られています。完成当時、プロデューサーは陰うつで難解だと感じ、監督不在のままナレーションを入れるなど内容を変更したのです。10年後、高まる人気を受け、スコット監督は自身の意図に沿って再編集を行った「ディレクターズ・カット」を公開。さらに今回放送するのが、再度スコット監督が指揮し、デジタル技術で色彩や音声を修正・変更した決定版ともいえる「ファイナル・カット」です。

バージョンによって映像や展開は異なりますが、音楽はほぼ一緒。シンセサイザーを駆使したヴァンゲリスの音楽は公開当初から絶賛されました。1943年、ギリシャ生まれのヴァンゲリス・O・パパサナシューは、60年代から音楽活動をはじめ、オリジナルアルバムや映画・テレビのサウンドトラックも手がけ、1981年の「炎のランナー」でアカデミー賞を受賞。世界的な音楽家となりました。ヴァンゲリスならではの幻惑的で美しい旋律は映像や物語と深く結びつき、何度も見たく、聴きたくなってしまいます。

人生や生きる意味に疲れながらも、レプリカントと対決するデッカードを演じるハリソン・フォード、一つ一つのことばをかみしめるように語り、レプリカントの苦悩や悲しみを見事に表現するルトガー・ハウアーはじめ、キャストももちろん魅力的です。

レプリカントとの攻防を通して「人間とは何か」を描く本作、そのテーマはAIが現実のものとなった今こそ見るものに迫ります。時代を先取りした傑作、見るたびに発見があり、魅了されます。どうぞお楽しみください。

プレミアムシネマ「ブレードランナー ファイナル・カット」

5月8日(水)[BS]午後1:00〜2:59


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

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