愛犬家のリチャード・ギアが熱演 リメーク版“ハチ公物語”

HACHI 約束の犬【坂本朋彦のシネフィル・コラム】

11月11日(土)[BSプレミアム]午後1:00〜2:34

東京・渋谷のシンボル、ハチ公像。主人を駅で待ち続けた忠犬ハチは今も多くの人に愛されています。1923年、秋田生まれのハチは今月で生誕100年を迎えます。
今回ご紹介するのはハチの物語をアメリカでリメークした感動作です。

舞台はアメリカ東部の郊外の街。大学教授のパーカーは駅で迷子になっている子犬を見つけ、連れ帰ります。妻のケイトは反対しますが、パーカーはハチと名づけ大切に育てます。すくすくと育ったハチは、パーカーを毎朝駅まで見送り、夕方は出迎えるようになります。ところがパーカーはある日、突然倒れ、帰らぬ人に。それでもハチは駅でパーカーを待ち続けます。やがて…。

渋谷のハチの物語を知り、リメークを企画したのは日系の女性プロデューサー、ビッキー・シゲクニ・ウォン。日本映画「ハチ公物語」(1987)を基に脚本が作られ、その脚本に感激したのが「プリティ・ウーマン」(1990)「シカゴ」(2002)で知られる大スター、リチャード・ギアでした。愛犬家のギアは製作も務め、映画化を進めます。監督のラッセ・ハルストレムは「ギルバート・グレイプ」(1993)など、細やかな情感を丁寧に描く演出を得意とするスウェーデン出身の名匠です。ハルストレム監督も犬が大好きで、犬が大事なモチーフになっている「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」(1985)、犬が主人公の「僕のワンダフル・ライフ」(2017)といった作品も発表しています。

成犬のハチを演じたのは3頭の秋田犬だそうです。ハルストレム監督は、俳優と犬が信頼関係を築いたうえで演技ができるよう、十分に触れ合う時間を設けて撮影を行ったとのことで、犬たちは自然で何ともいえない表情を見せてくれます。ギアの“ハチィ~”と呼ぶ声、ハチと触れ合う場面では、演技を超えた愛情が感じられるのも大きな魅力です。

そして、共演者も実力派です。妻のケイトを演じるジョアン・アレンはシカゴの名門劇団「ステッペンウルフ・シアター・カンパニー」の出身。数々の舞台で名演技を見せ、映画では「ジェイソン・ボーン」シリーズなどでも知られる演技派です。秋田犬がどんな犬かをパーカーに教えるケンを演じるケイリー・ヒロユキ・タガワは日系の名優。「ラストエンペラー」(1987)「SAYURI」(2005)、SFドラマ「高い城の男」など、抜群の存在感で幅広いジャンルの作品に出演しています。

人間と犬は、飼い主とペットという関係ではなく、深い絆で結ばれたパートナー。そんなキャストとスタッフの思いが感じられる名作です。どうぞご覧ください。

プレミアムシネマ「HACHI 約束の犬」

11月11日(土)[BSプレミアム]午後1:00〜2:34


坂本朋彦

【コラム執筆者】坂本朋彦(さかもと・ともひこ)

1990年アナウンサーとしてNHK入局。キャスターやニュースなどさまざまな番組を担当。2014年6月からプレミアムシネマの担当プロデューサーに。

関連記事

その他の注目記事